昨日はソーラーシェアリングについてどういうものなのか、導入的なことについて書きました。今回はもう少し踏み込んで、ソーラーシェアリングのメリット・デメリットについて書いてみたいと思います。
メリット
土地が確保できる
新規に低圧の太陽光発電をはじめる際に、太陽光に適した土地の要件として最低限求められる条件は次のようなものです。
- 太陽光発電設備の設置が可能な土地である
- 土地の取得価格が安価である
- 日当たりが良い、周囲に陰をつくるような建物などがない
そもそも、太陽光発電設備の設置はどこの土地にも自由に認められているわけではなく、森林法や河川法など各種の法律等により一定程度制限されています。農地も同様で、原則的には農地に太陽光発電設備を設置することはできず、設置する場合には農業委員会の許可等を経て雑種地等の他の地目に変更する必要があります。
FIT開始から10年近くが経過し、日本全国の太陽光発電に適したこのような土地は相当程度開発され尽くしているようです。その結果、傾斜地など難のある土地を無理に太陽光向けに開発するような事例も散見されるわけです。
この点、農地であれば、もともと日当たりは良い場所にあるのが通常ですし、宅地への転用が可能でない地域の農地も多くありますので、土地の単価も低い傾向にあるといえます。そして、ソーラーシェアリングをおこなう場合には、農地のまま太陽光をおこなうことを予定していますので、後述する「一時転用」という許可を得る必要はありますが、制度的に農地に太陽光発電設備を設置できることになっています。
低圧でも全量売電可能
低圧(10kW以上50kW未満)の事業用太陽光発電には、2020年度から「自家消費型の地域活用要件」というものが設定されています。これは、レジリエンスの強化やエネルギーの地産地消に資するため、以下の要件を課すというものです。
- 再エネ発電設備の設置場所で少なくとも30%の自家消費等を実施すること
- 災害時に自立運転を行い、給電用コンセントを一般の用に供すること
ただし、例外的に営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、3年を超える農地転用許可が認められる案件は、自家消費を行わない案件であっても、災害時の活用が可能であればFIT制度の新規認定対象とされ、全量の売電が可能とされています。
もともと発電設備の近くで電気を大量に使用する事業を営んでいる場合であれば、30%以上の自家消費をすることも選択肢になりますが、そうでない場合には30%の自家消費要件が低圧の発電所を新規に設置する場合の大きなハードルになると思われます。そこで、ソーラーシェアリングが注目されるという流れがあるのでしょう。
デメリット
許可手続きの煩雑さ
ソーラーシェアリングをおこなうには当該農地に設置する「支柱」ついて「一時転用許可」を取得しなければなりません。そして許可申請書に加えて、①発電所の設計図、②営農計画書、③知見を有する者の意見書等、④設置者と営農者が異なる場合の撤去費用に関する合意書を提出する必要があります。手続きの詳細は農林水産省のHPに資料があります。
②の営農計画書は別途書式が用意されており、作付予定作物や作付面積等について向こう10年にわたる営農計画の記載が求められます。また、③の書類は(農業の)普及指導員などの専門的知見を有する者が発電設備の設置による下部農地での営農への影響の見込みとその根拠を示すものです。いずれにしても、具体的な作物を想定したうえで、第三者の知見を援用しながら許可申請に臨む必要があります。
営農の実施・継続
一時転用許可は「営農の適切な継続」が前提となっていますので、当然転用期間中は営農を継続する必要があります。「営農の適切な継続」として認められるためには以下のような事項に該当しないことが求められます。
- 営農が行われない
- 農地の単収が、平均的な単収と比較し概ね2割以上減少している(荒廃農地の再利用の場合を除く)
- 荒廃農地の再利用の場合の一定の事由(遊休農地ではないこと)
- 農作物の品質に著しい劣化が生じている
また、実際の営農の継続にくわえ、農地における農作物の生産に係る状況報告が毎年求められます。この報告についても、記載内容について知見を有する者の所見の記載が求められています。
転用期間は原則的に3年以内とされており、期間が満了した場合には、再度一時転用許可を得てソーラーシェアリングを継続することが可能です。また、荒廃農地を利用する場合などには一時転用期間が10年以内とされます。
もともと農業を営んでいれば営農の継続は大きなハードルにはなりませんが、農業とは縁のなかった事業者がソーラーシェアリングを機に農業にも参入するという場合には、どのように営農を継続するか、という点がネックになるものと思われます。営農は第三者に委託しておこなうことも認められていますが、ソーラーシェアリングをおこなう場合には、プロジェクト期間としては20年間を想定する場合が通常でしょうから、そのような長期間の営農を安心して任せられるような営農者をどのように確保するかという課題をクリアする必要があるわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?ソーラーシェアリングには、日当たりの良い土地であることと全量売電というメリットがある一方で、一時転用許可の手続きの煩雑さと営農の継続というデメリット(負担)が伴うことがおわかり頂けたと思います。
低圧の太陽光発電はひところの活況に比べるとブームも過ぎ去った印象がありますが、再生可能エネルギーの普及は世界的な潮流でもあり、我が国でも息の長い普及に向けた取組みが模索されるものと思われます。他方、日本全国の耕作放棄地は増加傾向にあり、土地の有効活用の観点からもソーラーシェアリングのような取組みには一定の意義があるともいえます。
今後もソーラーシェアリングの動向については注意深く見まもっていきたいと思います。
一日一楽
いつもお世話になっている近所の郵便局の方に京都のおみやげを渡してきました。本当にささやかなものでしたが、喜んで頂けたようで安心しました。郵便局員の方々はサンタ帽をかぶってのご対応でした。今週末はクリスマスですから、季節感があって良いですね。