今回は創業の際の事業形態について解説します。具体的には個人で事業を始めるか、あるいは法人を設立し、あなたはその代表者として事業を運営するか、という2つのパターンがあります。それぞれメリット・デメリットがありますのであなたの事業計画にあった事業形態を選びましょう。
目次
個人と法人の比較
個人と法人とでポイントを全体的に比較しましたので、こちらをご覧ください。これ以外にも違いはありますが、創業時に検討しておきたい点について触れています。
個人 | 法人 | ||
設立手続き | 開業届け | ・開業届の提出や許認可が必要な場合にはその許認可を得ることが必要です ・開業届は税務署に提出します | ・ 開業届の提出や許認可が必要な場合にはその許認可を得ることが必要です ・税務署だけでなく、県税事務所と市町村役場にも提出が必要です |
法人設立 | 不要 | ・法人を設立する必要があります ・多くの場合は合同会社か株式会社のどちらかを選択します ・どちらの場合も会社の目的などを記載した定款(ていかん)の作成が必要です(※1) ・株式会社の場合は定款に公証人の認証が必要です | |
設立までの時間 | なし | ・会社の実印やゴム印の調製や定款の作成などの準備に1週間程度かかります ・株式会社の場合にはさらに定款の認証が必要ですので、もう1週間余裕がほしいところです ・登記の申請から設立までおおむね1週間かかります | |
設立費用 | 不要 | ・合同会社は定款印紙代が4万円、登録免許税が最低6万円 ・株式会社は定款印紙代と認証費用で合計9万円、登録免許税として最低15万円かかります ・電子定款を作成する場合は印紙代はかかりません ・市町村などの創業支援を受けた場合には登録免許税が軽減されることもあります | |
設立後の運営 | 経理 | ・事業の収入はそのままあなたの収入になります ・経費や借入金等を支払ったうえで、さらに税金を支払った残りが生活費になります ・事業のための経費と生活費は区別し、生活と経費を按分する必要があります ・経費にできる範囲が法人に比べてせまかったり、損失の繰越が3年間に限定されているなど不利な点があります | ・法人からもらう役員報酬を生活費にあてるます ・財産や負債が帰属する主体を個人と法人とに区別できるため個人事業よりも経理を区別しやすくなります ・交際費に制限はありますが、出張手当や退職金の支給、役員社宅の活用など経費として認められる範囲が広く、損失の繰越も最長10年可能です ・ただし法人の決算が赤字であっても最低7万円の住民税がかかります ・法人は社会保険に強制加入となり法人の負担も発生します ・役員報酬や社会保険の金額も考慮した上で法人の利益の見積もり、法人設立のメリットを検討することをおすすめします |
銀行口座 | ・個人の銀行口座をそのまま使用することも出来ます ・屋号のある個人口座を開設できる場合もあります ・インターネットバンキングは、事業主用の口座でなければ手数料は取られない場合が多いようです | ・銀行口座を新たに開設する必要があります ・ネット銀行は短期間にかつ手間も少なく口座開設できる傾向です ・それ以外の金融機関はオフィスの住所や形式などがより厳格に行われる傾向があり、口座開設に要する時間も長めです ・インターネットバンキングには、ネット銀行以外は2,000~3,000円/月程度の利用料がかかります ・クラウド会計の相性や利用料のことを考慮するとネット銀行に魅力があります ・融資の利用や取引先からの信頼の点ではネット銀行以外の銀行のほうが有利です | |
社会的信用 | 個人に比べ法人の方が金融機関や取引先の信用力が大きいといわれます | ||
責任 | 無限責任 ・個人が負担する債務について全責任を負担し、事業の借入金が返済できない場合、個人財産から返済を求められます | 有限責任 ・株式会社や合同会社の場合、出資者は出資金額の範囲でしか責任を負わないのが原則です。 ・社長が会社の債務について保証する場合には社長も責任を負います |
※1 定款の目的に記載のない事業をいとなむ場合、その事業に対する許認可や金融機関の融資がおりない場合がありますので、慎重な検討が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
個人のまま創業するか、法人を設立するかの判断には少なくとも以上のような要素を考慮する必要があることがおわかり頂けたと思います。
事業を低コストでスピーディーに立ち上げるには個人のまま創業する方が有利ですが、事業の拡大を追求する場合には多少のコストや時間をかけても法人を設立してから事業を育てていく方が望ましいといえます。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、あなたの事業計画にふさわしい事業形態を選ぶようにしてください。
一日一楽
最近は1~2回/週の頻度でウェブ研修を受講しています。同業者さんの肉声などを聞ける貴重な機会で、毎回なにかしら新しい学びや刺激があり楽しんでいます。自宅にいながらライブ研修に参加できるとは夢のような時代ですね!