12月に入ると1年の終わりを意識して、なんとなく心がそわそわしてきます。大掃除や年賀状、年末年始の帰省の計画など人それぞれ毎年のTo Doがあるのではないでしょうか。事業を行っている方であれば、12月には個人の決算も締まりますし、12月を決算月とする法人を経営されている方もいらっしゃることでしょう。
さて、12月になると市町村から償却資産税の申告書が送られ始めます。今回はこの償却資産税について触れてみたいと思います。
償却資産税
まず「償却資産税」といいますが、固定資産税の一種で、償却資産にかかる固定資産税のことを特に「償却資産税」と称しています。固定資産税は土地、家屋及び償却資産(これらを総称して「固定資産」といいます)の所有者に課せられる税金です。
土地、家屋にかかる固定資産税は市町村から4~5月頃に納税通知書と納付書が送られてきて、それに従って支払いをします。税額は市町村が所定の方法で課税標準額を求め、それに税率をかけて計算します。
これに対し、償却資産については償却資産の所有者が自らその取得価額等を申告する必要があります。その申告額等をもとに税額が決定される仕組みとなっています。12月に償却資産税の申告書類が送られてくるのは、固定資産税は1月1日時点の固定資産の所有者に課されることになっており、償却資産の場合、土地や家屋のような登記上の所有者に課すといったことができないため、償却資産の所有者に申告させる必要があるわけです。
会計事務所と償却資産税業務
今年中に新しく取得した償却資産がある場合には、償却資産税の申告書にその取得価額等を記載して、翌年の1月31日までに市町村に申告する必要があります。年明けの最初の作業として償却資産税の申告書の対応をするのがルーティンになっているような会計事務所も多いのではないかと思います。
償却資産税については取得から数年間の減免措置が講じられる場合もあり、そのような場合には償却資産税の申告書に所定の書類を添付する必要があります。たとえば、先日解説した先端設備等導入計画における固定資産税の減免措置のようなものがあります。書類に不備があると減免措置が受けられない可能性もありますので、会計事務所は年内からそのような措置の対象になる償却資産の有無に注意しながら、クライアントにも必要な資料の提出をお願いしながら、なんとか期限内に申告できるように準備をします。
ところで、当事務所でも使用しているfreeeの申告用システムであるfreee申告がこのたび償却資産税にも対応した、というリリースが本日ありました。さまざまな市町村に償却資産を多く保有するクライアントの場合、作成する申告書も多くなりますので、このような機能拡充は会計事務所にとっては朗報です。
リリースにもありますが、12月、1月は年末調整や法定調書の対応で会計事務所は業務量が増える時期ですので(12月決算の会社も少なくないですし)、freee会計、固定資産台帳と償却資産税申告が連携して欲しいというのは会計事務所の切実な願いだったと思われます。
償却資産
償却資産は土地、家屋以外の事業用の固定資産ですが、細かくみていくといろいろ注意すべき点があります。
建物との区別
建物に取り付けられている設備が建物と一体であれば独立した償却資産とはいいにくいですが、独立した機器としての性格が強かったり、特定の生産又は業務の用に供されるもの等は償却資産として扱われます。
会計の実務では、建物を資産計上する際に、償却資産に該当するものがあれば、あらかじめそれを建物とは別の資産(建物附属設備や機械装置)として計上します。このことによって、償却資産税の申告のときには当該建物附属設備などを集計しやすくするわけです。特定の償却資産を取り替えたりするときも、古い資産の金額がわかっているので、処理がしやすいということもあります。
建物とそれ以外の設備を分けて資産計上することには、もうひとつ別の意味があります。それは減価償却額が変わってくるということです。建物附属設備や機械装置の耐用年数は概ね15年以内くらいとなっているのに対し、建物本体はその構造により木造であれば22年、RC造であれば47年など長期にわたります。この耐用年数の違いにより、一般的には建物附属設備や機械装置などを建物と区別して計上するほうが償却開始時の償却額が増える傾向にあると思われます。
不動産投資家の中には取得初期の減価償却額を多めに計上することによって資金留保を高め、次の投資物件の自己資金を厚くするという方針のもと、償却資産を細かく計上する人もいるようです。特に新築の不動産の場合には、建築費の内訳が明確ですので、正確に償却資産を計上しやすいという事情もあるでしょう。
少額の資産
土地、家屋以外の事業用の固定資産であっても、一部の少額の資産は償却資産税の対象外となります。たとえば、10万円未満の資産計上していない固定資産(少額の電子機器など)や3年で一括償却する20万円未満の資産は償却資産税の対象外です。
これに対し、30万円未満の資産を合計300万円まで全額損金計上が認められるという中小企業の特例の対象となる資産は償却資産税の対象となります。この場合、会社のBSには計上されていない「資産」について、別途償却資産税の申告が必要になるため、その点では会計事務所泣かせの資産です。前述のfreee申告はこういう取扱も適切に処理できるようになっているはずですが、どういう処理がされるのか実際に見てみたいものです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。年末年始の会計事務所の業務の一端である償却資産税とその申告業務について触れました。償却資産税は所有者からの申告が必要、という点が土地、家屋にかかる固定資産税と異なります。年明け1月31日が申告期限ですので、業務用の資産を取得した事業者の方は12月中にその旨顧問の会計事務所に教えてあげるようにしてください。
一日一楽
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