今回は「先端設備等導入計画」についてその概要を解説します。前回解説した「経営力向上計画」と似たような建付けの制度ですが、異なる部分もありますのでそれらを意識しながら理解するようにしてください。
はじめに
先端設備等導入計画とは?
先端設備等導入計画は「中小企業等経営強化法」のもとで、中小企業者が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。新たに導入する設備の所在する市町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に、中小企業者が認定を受けることができます。
認定を受けた場合には取得した設備にかかる固定資産税の軽減(3年間、ゼロから1/2)や融資に対する信用保証に関する支援を受けられます。
まず確認すべき事項
この制度の利用を検討する際に注意すべき点がありますので、あらかじめ以下の点をよく確認してください。
市町村ごとの導入促進基本計画を確認
新たに導入する設備の所在する市町村が「導入促進基本計画」を策定しているか。また、導入する設備がその計画において「対象設備」になっているかをまず確認します。
市町村ごとの導入促進基本計画の策定状況は各市町村のHPなどで確認することができます。
また、対象設備は市町村ごとに対象が異なり、また、市町村によっては、認定の対象となっていない業種や地域等もありますので、導入する設備の所在地の市町村の導入促進基本計画の内容をよく確認する必要があります。
認定経営革新等支援機関による「確認書」の発行が必須
認定経営革新等支援機関(商工会議所、会計士、税理士等)から、先端設備等導入計画の内容を確認し、「確認書」を発行してもらう必要があります。また、固定資産税の賦課期日である翌年の1月1日までに設備を取得していることが必要です。
市町村に申請してから認定まで最低1ヶ月はかかるといわれており、またあとで触れる工業会の証明書の取得などにも時間を要する場合がありますので、設備の導入スケジュールも考慮しながら、あらかじめ余裕をもったスケジューリングをしましょう。
固定資産税の軽減措置
次に、固定資産税(償却資産税を含む)の軽減の措置について解説します。
軽減措置の概要は、以下のような内容です。
①中小事業者等が、②適用期間内に、市区町村から認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づき、③一定の設備を新規取得した場合、新規取得設備に係る固定資産税の課税標準が3年間にわたってゼロから1/2の間で市町村が定めた割合に軽減される。
①中小企業者等は、資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人や従業員数が1,000人以下の個人が対象となります。
②適用期間は、もともと令和3年3月までの期間が延長され、令和5年3月までの期間となっています。
③対象設備は、次のような設備とされています。
商品の生産もしくは販売または役務の提供の用に直接供する設備であって、A一定期間内に販売されたモデルであり、かつ、B旧モデル比で生産効率等の指標が年平均1%以上向上(※)する設備(事業用家屋を除く)
※A及びBについて、工業会等からの証明書の取得が必要となります
利用の流れ
次に、この制度を利用する際の流れを解説します。
①工業会への証明書
発行依頼~入手(認定後、1/1までに提出しても良い、という緩和措置があります)
設備を導入するメーカー等に依頼して、工業会等の証明書を入手します。
②認定支援機関等支援機関の事前確認書
発行依頼~入手(設備の導入によって労働生産性が年平均3%以上向上するかを確認)
③計画申請書の提出~認定
市町村に対し、計画申請書、①の証明書の写し及び②の確認書を提出する
④設備取得
賦課期日(1月1日)までに設備を取得する必要があります。
⑤償却資産税の申告(1月末まで)
申告の際に、認定書の写し、認定を受けた計画書の写し及び工業会の証明書の写しを提出する
金融支援
先端設備等導入計画が認定された事業者は、資金調達に際し債務保証に関する支援を受けることができますので、これについても簡単に解説します。
具体的には、対象設備の導入に際し、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での以下のような追加保証が受けられます。
通常枠 | 別枠 | |
---|---|---|
普通保証 | 2億円 | 2億円 |
無担保保証 | 8,000万円 | 8,000万円 |
特別小口保証 | 2,000万円 | 2,000万円 |
経営力向上計画との違い
最後に、経営力向上計画との違いについて、間違いやすい点を中心に解説します。先端設備等導入計画と経営力向上計画を併用することもできますが、要件やスケジュールが異なる部分がありますので、注意しましょう。
労働生産性の向上は年平均3%以上!
年平均3%以上ですから、計画期間を3年間とする場合には、3年間で合計9%以上の向上が必要になります。
これに対し、経営力向上計画では、計画期間が3年の場合1%以上、4年の場合1.5%以上、5年の場合2%以上の労働生産性の向上で足りていました。 経営力向上計画の場合より高い伸び率が必要ですので、混同しないようにしてください。
なお、仮に計画が達成できなくてもペナルティは課されません(これは経営力向上計画と同様)。
設備取得前に、計画の認定が必須!
利用の流れ、で解説したとおり、設備を取得する前に計画の認定を取得しなければなりません。これに対し、経営力向上計画では認定前60日以内であれば、先に設備を取得することも認められていました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
先端設備等導入計画の概要について、利用の流れとメリットについて解説しました。メリットには固定資産税の軽減と金融支援がありましたね。また、経営力向上計画との違いについてもおわかり頂けたと思います。
固定資産税は通常、取得してまもない年度ほど金額が高くなる傾向がありますので、最初の3年度分について軽減を受けられるのは大きなメリットといえるのではないでしょうか。
経営力向上計画との違いに留意しながら、より有利な条件で設備の導入を進めるようにしてください。
一日一楽
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