今回は「経営力向上計画」という中小企業に対する支援制度について概要を解説します。この制度を利用すると様々なメリットがありますので、利用が可能な方は是非利用を検討してみてください。
制度の概要とメリット
はじめに制度の概要について解説します。
「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画です。この計画を国に申請し、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができるという制度です。
また、申請にあたっては「経営革新等支援機関」など(地域金融機関や士業等の専門家など)のサポートを受ける必要がある場合があります。
申請書様式は3枚程度の分量で、①企業の概要、②現状認識、③経営力向上の目標および経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、④経営力向上の内容など簡単な計画等を作成するものです。
次にメリットについて簡単に解説します。
メリットの主なものに、①一定の設備取得に対する即時償却等の支援、②計画に基づく事業に対する資金調達支援、③認定事業者に対する補助金における優先採択、④事業承継等の際の不動産取得税・登録免許税の軽減措置等があります。
たとえば、以前解説した小規模事業者持続化補助金の採択にあたって、経営力向上計画の認定を受けている場合には、加点事由となるのでしたね。
申請書の作成にはそれほど大きな負担がかからないのに対し、認定を受けることには様々なメリットがありますので、設備の導入などを検討している場合には、ぜひこの制度の利用も視野に入れて検討を進めてください。
経営力向上計画の申請書の作成
では次に経営力向上計画の申請書に記載する内容について解説します。ここでは設備取得に対する即時償却等の支援を受ける申請内容を念頭においています。
提出先(宛名) 等
まず最初に①提出先(宛名)、②事業分野と指針の内容、③管轄の地域、④申請書の形式を確認します。
宛先は経営力向上計画の事業分野(業種)を所管する大臣ですが、権限を委譲している場合には、地方支分部局の長になります。
「事業分野」欄は、計画に係る事業の属する事業分野について、「日本標準産業分類」を確認のうえ、該当する中分類(2桁)と細分類(4桁)コードと項目名を記載します。日本標準産業分類はこちらから確認できます。
「事業分野別指針名」欄は、計画に係る事業の属する事業分野における事業分野別指針を記載します。事業分野別指針はこちらで事業分野ごとに確認できます。
申請書の様式は通常は様式1を使用します(不動産取得税の特例の適用を受ける場合で都道府県経由で申請する場合は様式2)。
実施時期
次に実施時期の記載をします。実施時期は計画開始の月から起算して、3年、4年、5年のいずれかの期間を記載します。
計画が認定されれば期間内は有効となりますので、短く記載する理由がなければ5年で記載すれば良いでしょう。なお、経営力向上計画の申請前に設備を取得する場合には、2ヶ月度限度として計画の起算日をさかのぼることができます。
現状認識
続いて現状認識として、以下の項目について記載します。
- 自社の事業概要
- 自社の商品・サービスが対象とする顧客・市場の動向・競合の動向
(顧客の数や主力取引先企業の推移、市場の規模やシェア、自社の強み・弱み等を記載) - 自社の経営状況(前々期、前期の売上と営業利益の比較を記載)
- 経営課題(上記1.から3.を踏まえて、経営課題を整理して記載)
この項目は小規模事業者持続化補助金の「経営計画」の記載事項と重なる部分がありそうですね。
経営力向上の目標等
経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標を記載します。
事業分野別指針を基に、指標の種類を選び、経営力向上計画の実施期間に応じた伸び率を記載しますが、基本方針に従って策定する場合は、「労働生産性」を指標として記載します。
労働生産性を用いる場合には具体的には以下のような記載となります(労働者数に変化がない場合)。
労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働者数
指標の種類 | A現状(数値) | B計画終了時の目標(数値) | 伸び率 (B-A)/A(%) |
労働生産性 | 6,930千円 | 7,000千円 | 1% |
経営力向上の内容
事業承継等をしない場合には通常(1)有り、(2)無し、という記載になります。
(3)「具体的な実施事項」については、「事業分野別指針の該当箇所」欄は実施事項が事業分野別指針のどの部分に該当しているか記載します。たとえば、製造業で設備取得をする場合で、「多能工化」に取組む場合にはホ(1)、「暗黙知の形式知化」に取組む場合にはホ(3)を記載します。
経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
ここには資金調達方法について記載します。ある程度大まかに記載して構いませんが、 資金繰り支援策である日本政策金融公庫の新事業活動促進資金を使う場合は、この記載を参考に融資判断されるので、希望する融資額と整合するように記載します。
経営力向上設備等の種類
法人税上の優遇措置を活用する場合には、導入する設備の種類等について記載します。
なお、翌年以降追加の設備投資する場合には、最初に作成した申請書の設備の欄に追加で取得する設備の種類等を書き加えていく形で更新します。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
経営力向上計画の作成にあたっては、まず提出先(宛名)等を確認し、実施時期を記載します。続いて自社にかかる現状認識をまとめた上で経営力向上の目標等を設定します。そして経営力向上の内容を事業分野別指針を参照しながら記載します。最後に資金調達と設備の種類について記載すれば経営力向上計画の申請書はできあがりです。
現状認識や経営力向上の内容については自社の状況や取り組みの内容をよく整理した上で記載するとスムーズに進みます。
次回は経営力向上計画の認定によって受けられる支援措置の内容について、具体的に解説します。
一日一楽
10日ほど前から食事にご飯を摂るようにしています。ここ数年のいろいろな曲折を経て、子供の頃から慣れ親しんだ食生活に戻りました。ご飯は腹持ちがよく、空腹による余計な間食が減り、結果として体重が自然に減ってきています。
というわけで今日は久しぶりにスーパーで米を買いました。無洗米の玄米です。玄米は前から取り入れたかったのですが、無洗米が見つからなかったので諦めていましたので、嬉しい発見です。あしたの朝食が楽しみです!