11月26日に令和3年度補正予算案が閣議決定されました。この予算案には中小企業関係の支援策として3.9兆円が計上されています。これから国会の審議を経て正式に成立となりますが、今回は主なポイントについて予算成立前にあらかじめ解説します。
事業復活支援金
令和3年度補正予算案の中小企業向けの支援策の中でいちばん目をひくのは事業復活支援金という給付金でしょう。2.8兆円という規模で、予算総額の70%程度を占めています。現時点で判明している補助金の概要は次のとおりです。
対象者
新型コロナの影響で、 2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高が50%以上または30%~50%減少した事業者
フリーランスを含む個人事業主や小規模事業者から中堅企業まで、地域・業種を問わず幅広く対象になるようです。
給付額
5 ヶ月分( 11 月~ 3 月)の売上 高減少額を基準に算定した額を一括給付
上限額
売上高減少率 | |
▲50%以上 | 50万円 |
▲30%~50% | 30万円 |
売上高減少率 | 売上高1億円以下 | 売上高1億円~5億円 | 売上高5億円超 |
▲50%以上 | 100万円 | 150万円 | 250万円 |
▲30%~50% | 60万円 | 90万円 | 150万円 |
資金繰り支援
政府系金融機関による実質無利子・無担保融資(いわゆる「ゼロゼロ融資」)の申込期限を年度末まで延長するものです。民間金融機関の受け付けは2021年3月末に終了していますが、 政府系金融機関による支援は延長され、現在も継続中です。概要は以下の通りです。
対象者
新型コロナの影響で 、売上が減少した中小企業(小規模個人▲5%/小規模法人▲15%/その他▲20%)
無利子上限
日本政策金融公庫(中小) 3 億円、(国民)6,000 万 円、商工組合中央金庫 3 億 円
無利子期間
当初3年間
貸付期間
運転資金 1 5 年以内、設備資金 2 0 年以内
据置期間
最大で5年
なお、資金繰り支援には、以上ほかに、公庫による資本性劣後ローンや伴走支援型特別保証も盛り込まれています。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は数回に分けて解説しましたが、令和3年度補正予算案でも継続されます。継続にあたり以下のような見直しが行われる模様です。
- 売上高減少要件の一部緩和
- 回復・再生応援枠の創設
- グリーン成長枠の創設
売上高減少要件の一部緩和
従来の売上減少要件は、「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること」に加え、「2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること」が必要でした。
今後は、後者の要件が撤廃され、使い勝手が向上するようです。
回復・再生応援枠の創設
売上高が30%以上減少するなど、業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者に対する特別枠が創設されます。中小企業の場合、補助金額は最大1,500万円、補助率は3/4となる模様です。
グリーン成長枠の創設
研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者に対する支援枠が創設されます。この枠については売上高減少要件撤廃され、中小企業の場合、補助金額は最大1億円、補助率は1/2となる模様です。
持続化補助金
この補助金も継続が予定されています。小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓等に対する支援という大きな枠組みの中で、新しい支援枠の創設や上限額の引き上げがされる模様です。
申請類型 | 補助上限額 |
通常枠 | 50万円 |
成長・分配強化枠 (賃上げや事業規模の拡大) | 200万円 |
新陳代謝枠 (創業や後継ぎ候補者の新たな取組み) | 200万円 |
インボイス枠 (インボイス発行事業者への転換) | 100万円 |
補助率は原則的に2/3ですが、成長・分配強化枠の一部の類型は3/4となる模様です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップを支援する補助金です(通常型)。
また、2020年度からは感染リスクに繋がる業務上での対人接触の機会を低減するような業務形態の非対面化への取組みに対する支援(特別枠)も追加されています。
令和3年度補正予算案では、「インボイス制度への対応も見据えたITツールの導入補助に加え、PC等のハード購入補助等」が追加されます。
ITツール(会計ソフト、受発注システム、決済ソフト)、PC、タブレット等、レジ等が補助対象となり、補助上限額は補助対象に応じて、10万円から350万円となる模様です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は令和3年度補正予算案における中小企業支援策について主なものを解説しました。
中小企業に対する支援策の中では、規模感などから事業復活支援金が注目を集めそうです。一方で、事業再構築補助金や持続化補助金など従来からあった支援策も見直し等がされたうえで継続されますので、以前残念ながら採択されなかった場合でも、今後の支援策の要件しだいでは採択の可能性が高まる可能性もあります。
持続化補助金やIT導入補助金については、2023年10月1日からの「インボイス制度」の導入を見越した支援策が盛り込まれています。インボイス制度対応をうたったさまざまなITツールは最近よく目にするようになりました。いずれ導入される制度ですので、利用できる支援策はぜひ積極的に利用したいものです。
いずれにしても補正予算案の動向に注目しながら、来年以降の新しい取組みの参考にしてください。
一日一楽
群馬銀行と第四北越銀行が連携協定を結んだ、という報道がありました。私の地元は埼玉県北部ということもあり、どちらの銀行も店舗を構えています。協定の目的は、観光・物産振興や地域活性化などの分野で協力とのことです。
ネット取引への対応という点では、ネット銀行の方に分があり、地方銀行の優位性はなかなか感じにくいものがあります。異なる地域間での地銀の連携はよく耳にする話しですが、利用者として利便性やメリットを感じたことはあまりありません。
融資などを通じた顧客との距離の近さを生かして、地方銀行の間でもサービス内容で競って欲しいものです。