今年も師走をむかえ、そろそろ確定申告が気になりはじめた人も多いのではないでしょうか?12月に入ったとたん、償却資産税の申告書類が地方自治体から届くようになり、シーズンの到来を実感されている税理士の先生方も多いと思います。
自民党の税制改正大綱がまもなくまとまる見通しということで、その内容に注目も集まっています。今回は少し前になりますが、9月16日に日本商工会議所(日商)が公表した「令和4年度税制改正に関する意見」をながめながら、あれこれ書き散らしていこうと思います。
そもそも日商とは?
まずはじめに意見を公表している日商について簡単に紹介したいと思います。日商のHPには次のような説明があります。
日本商工会議所は、全国515の商工会議所を会員とし、各地の商工会議所が「その地区内における商工業の総合的な発展を図り、兼ねて社会一般の福祉増進に資する」という目的を円滑に遂行できるよう全国の商工会議所を総合調整し、その意見を代表している団体です。
日商の概要(一部抜粋):日本商工会議所HP
つまり、日本各地にある商工会議所の意見を代表する団体、ということですね。別の日商の資料によると、約115万の会員企業の約9割が中小企業で、業種としては卸売・小売業、建設業、製造業、サービス業(宿泊業、飲食サービス業を含む)の割合が多くなっています。
ちなみに、似たような政策提言は日本経済団体連合会(経団連)や経済同友会もそれぞれ公表していますが、経団連は約1,600ほどの会員のうち大企業が大半を占めてますし、経済同友会は日本を代表する大企業のトップの集まりです。
ですので、中小企業の意見が反映されやすいという点では、日商の意見が一番参考になると思われますので、今回日商の意見を題材にしたしだいです。
意見書の内容
意見書の主な内容としては、コロナ禍に苦しむ中小企業の事業継続等の支援策とポストコロナの変革を促す政策が大きなテーマになっています。これ以外は、消費税インボイス制度対応、事業承継税制、デジタル化への環境整備、等々となっています。
コロナ禍で困窮する中小企業等の事業継続・雇用維持を後押しする税制
交際費課税等
法人の支出する交際費については、中小法人は800 万円までの全額損金算入等が可能となっていますが、じつは交際費は原則として全額が損金不算入(税法上の経費とならない)となっていて、特例としてこのような扱いになっているに過ぎないのです。これを全額損金算入を認めるなど抜本的に見直しませんか?等と提言しています。
外食費控除(仮称)の創設
個人が外食した費用の一部(例えば年間10万円)を、医療費控除と同じ様に、課税所得から控除する「外食費控除」を作りませんか?と提言しています。飲食業界は中小企業が多いですから、このあたりの主張には日商らしい特徴がにじみ出ていますね。
欠損金の繰越期間(10 年間)の無期限化
中小企業は青色申告書を提出している場合、10年以内の間に生じた欠損金について控除が認められています。これを10年間の縛りをなくし、無期限に認めるよう提言しています。これについては、10年以上欠損が続いている状況の方をどうにかする方が先のような気がしますが、そういう会社も多いのでしょうか。
欠損金の繰戻し還付の対象期間の拡充
また、損失が発生した前年は利益が発生していて納税していたという場合には、 欠損金の繰戻し還付により前年支払った納税について還付を受けることができますが、これを前年に限らず、2年さかのぼって前前年分についても認めませんか?、という提言をしています。
これはもっともな指摘かなと思います。飲食業界などはコロナで突然の需要消失に見舞われましたが、それまでは利益もそれなりに出ていたのでしょうし。
ポストコロナへのビジネス変革等の挑戦を後押しする税制
少額減価償却資産特例の拡充・本則化
少額減価償却資産の特例というのは、中小企業が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得した際に、明細書の添付などの要件を満たせば、合計300万円まで全額損金計上が認められるという制度です。この制度も2年間の特例であって、現在令和4年3月31日までが期限となっていますが、これまで何度も延長を繰り返しています。
そこで、いっそのこと特例ではなくこれを原則にして、かつ、30万円や300万円といった上限も引き上げませんか?という提言です。感染対策の設備やテレワーク関連機器等のニーズが大きいので、上限が低すぎるということですね。
償却資産に係る固定資産税の廃止
償却資産に係る固定資産税(償却資産税)を廃止せよ!となかなか思い切った提言です。償却資産税は国際的にも稀な制度だそうで、設備投資を阻害するものだ、と威勢が良い感じです。
やや細かい話しですが、上記の少額減価償却資産の上限は30万円でしたが、例えば、25万円の資産を取得した場合には、法人税(国税)の関係では資産として扱わなくて良いのですが、償却資産税(地方税)の関係では20万円以上の資産が対象となっており、償却資産税の申告が必要になります。
この点は「事業者は申告のために帳簿の二重管理等の納税事務負担を強いられている」と指摘されていて、「そーだ、そーだ」という声がどこからともなく聞こえてきそうです。償却資産税を含め固定資産税は地方自治体の重要な財源ですので、敢えて「納税事務負担」にスポットを当てているあたりに自治体への多少の配慮がにじんでいるようで、味わい深いです。
ただ、昨今の「10万円相当の給付」(令和3年度子育て世帯等臨時特別給付事業)の事務経費が1,000億円近くになるという話しを聞くにつれ、この国に存在するさまざまな「事務負担」を足し合わせると一体どれだけの金額になるのか、気が遠くなるような思いです。そのあたりの闇の深さを意識して敢えて「納税事務負担」という切り口で指摘をしているのだとしたらなかなか見事な指摘です。
まとめ
好き勝手に書き連ねていたら、ほどよい分量になってしまいましたので、今回はこのくらいで。税制改正大綱関連の情報はしばらくウォッチしてみたいと思います。
一日一楽
本日紹介した日本商工会議所はもとをたどれば、渋沢栄一が会頭を務めた東京商法会議所(現在の東京商工会議所)に行き着くようです。渋沢栄一といえば2024年にお目見えする新1万円札の図柄にもなるなど、注目を浴びていますね。2021年の大河ドラマの主人公でもあり、郷土の偉人が取り上げられるのは誇らしいのですが、ドラマは2話で挫折しました。私のドラマ視聴はいつも長続きしないので、不思議なことではないのですが。
さて、本日の「女系家族」は最後まで観通せるのでしょうか?おやつなどを買い揃えて、ゆる~く観る戦略です!