12月10日に与党税制改正大綱が公表されました。旅行中でしたのでフォローできていませんでしたが、遅ればせながら目を通してみました。日商の令和4年度税制改正に関する意見について先日解説しましたので、それと照らし合わせながら、中小企業に関係の有りそうな箇所についてコメントしたいと思います。
交際費課税
交際費の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、中小法人にかかる損金算入の特例の適用期限を2年延長する、としています。この通りになれば、中小法人が800 万円までの全額損金算入等が可能となっている現行の取り扱いは2年延長されることになります。
欠損金関連
欠損金の繰越期間の無期限化や繰戻し還付の対象期間の拡充については具体的な措置は盛り込まれていませんでした。
外食費控除の創設
こちらも言及はありませんでした。まぁそうだろうなとは思ってました。Go to eat とかこれからあるかも知れませんし、そっちの方が実現性が高いかも知れません。
少額減価償却資産特例の拡充・本則化
現在令和4年3月31日までとなっている特例の期限は更に2年延長されるようです。特例ではなく本則化せよとの日商の提言は容れられていません。むしろ、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産を除外するという文言があります。節税の方法として30万円未満の資産(ドローンや足場など)を取得して、それをリースすることによって取得費を回収するスキームがあり、それを封じることが目的のようです。
節税スキームを封じる対応としては、特例の対象資産だけでなく、10万円未満の資産や一括償却資産についてもリースされる資産は対象外としています。節税策への対応策については近年はかなり意識されている印象です。コロナ対策で財施がふくら一方、税金の使いみちや徴税の公平性にも関心が高まっていますから、この流れは今後も続くのかも知れません。
償却資産に係る固定資産税の廃止
これも取り上げられていませんでした。まぁこれもなかなか難しいでしょうね。
消費税関連
インボイス制度の導入凍結も取り上げられていませんでした。インボイス制度について、円滑な制度移行に向けて政府・与党は一体となって万全の対応を進める、とのことです。
インボイス制度の導入に伴い、 免税事業者である小規模事業者が取引から排除される懸念がくすぶっているわけですが、この点については、独占禁止法、下請法等における取扱いを明確化するなどし、適切に対処するとしています。独占禁止法等により適切に対処するというのは消費税率が上がるたびに取られてきた対応ですので、インボイス制度の導入に伴ってなにか新しい対応をするという方針は今のところ考えていないようです。
消費税免税、外国人留学生は除外
先般の新聞報道であったとおり、免税店などで免税で購入することができる非居住者は、「短期滞在者、外交又は在留資格を有する者に限る」等としており、外国人留学生や企業研修生などの長期滞在者は除外される模様です。
これも一部で不審な免税購入の実態があったことが端緒となって取られた対応のひとつです。
納税環境整備
税理士制度の見直しについていろいろ言及があります。気になったものを2項目とりあげます。
税理士の業務の電子化等の推進
- 税理士は税理士の業務の電子化等を通じて納税義務者の利便性向上及び税理士の業務の改善進歩を図るよう努めるものとする旨の規定を設けることとする
- 税理士会の会則に記載すべき事項に、税理士の業務の電子化に関する規定を加える(中略)こととする
以上の内容を税理士法などに盛り込むのかも知れません。 税理士の業務は程度の差こそあれ電子化は進んでいますので、業務の電子化それ自体に反対の税理士は多くないように思います。ただ、上記の規定を受けて具体的になにか特定の対応をする必要があるのだとすると税理士は少々注意が必要です。
懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設等
これもしばらく前の新聞報道などで取り上げられていましたが、懲戒処分を受けた税理士が「廃業」することにより、懲戒処分を免れていた(その後ふたたび税理士登録していた税理士もいた)事案(いわゆる懲戒逃れ)がみられたそうです。
このような懲戒逃れが横行してしまうようでは税理士制度に対する信頼も保てませんから、対策を取るのはしごく妥当な措置でしょう。
まとめ
中小事業者の意見を代弁する日商の税制改正に関する意見は、租税特別措置法の延長など「既定路線」の項目などが取り入れられていますが、インボイス制度の凍結など大胆な提言はスルーされている印象です。大綱では首相肝いりの「賃上税制」の色彩が強くにじんでいるのが印象的でした。
なお、与党の大綱では電子帳簿保存法の施行がもともと2022年1月1日だったのが、2年間の経過措置が設けられる模様です。 電子帳簿保存法については施行直前になってやや混乱が見られますので、もう少し様子を見ながら、後日別途まとめたいと思います。
一日一楽
京都で買ってきた漬け物でさっそく朝食を食べました。シンプルですが飽きもこない気がします。ふるさと納税の返礼品も続々と届き始めたので、1月末ころまでは食材には事欠かないかも知れません。