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経営セーフティ共済について

12月も残りすこしとなりました。年末になると資金繰りが悪化して倒産にいたるというケースがあり、金融庁や経済産業省なども金融機関等に向けて注意喚起を発信したりしています。年末はクリスマス商戦などにより取引量が増大し、それに伴う資金需要の増大が資金ショートの引き金になるという背景があるようです。

さて、事業者としては自身の事業の資金繰りの管理は当然注意深く意識していると思いますが、売掛金をもっているような取引先の動向も自社の事業の資金繰りに大きな影響を与えます。例えば、入金を予定していた売掛金の支払いが取引先が倒産してしまったら、どうでしょうか?その売掛金の入金をあてにして自社の支払予定を立てている場合には、どうにかして別の資金を調達して支払いを行う必要が出てくるわけです。

このような事態に備える方法として、「経営セーフティ共済」という制度があります。今回はこれについて解説したいと思います。

目次

概要

経営セーフティ共済は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための共済制度です。この制度には以下のような特徴があります。

  1. 無担保・無保証人で、掛金の10倍までの借り入れが可能
  2. 取引先が倒産後、すぐに借り入れが可能
  3. 掛金について税制優遇措置がある
  4. 解約手当金が受け取れる

加入者は総額800万円に達するまで毎月掛金を積立てることにより、取引先が倒産などした場合に、積み立てた掛金の最大10倍(上限8,000万円)か回収困難となった売掛金等の金額のどちらか少ない方の金額を上限として借入を受けることができます。

また掛金については、法人の場合には損金に、個人事業主の場合には経費にそれぞれ計上することができますので、一種の節税にもなります。

さらに共済を解約した場合には、解約手当金を受け取ることができます。掛金を12ヶ月以上納めていれば掛金総額の80%以上の手当金が、40ヶ月以上納めていれば掛金総額の100%が手当金として戻ります。

使い方

以上のような特徴のある制度ですが、使い勝手としてはどのようなものなのでしょうか。制度本来の目的は「取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度」というところにありますので、取引先の倒産に備える借入というのが一番の目的です。一方で、掛金が経費として認められるという「節税効果」が注目されることも多いようです。また、加入する場合には毎月の掛金の支払が発生しますので、その観点ではキャッシュフローのマイナス要因として作用します。これら3つの観点で制度についてもう少し詳細に見てみたいと思います。

借入

制度本来の借入は、「取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合」に受けることができます。「倒産」や「倒産日」は、破産等の法的整理や手形の不渡等の取引停止処分などの倒産の種類ごとにきちんと定義されていますので、それらに該当する必要があります。

したがって、単なる支払遅延のような場合や「夜逃げ」はこの制度が適用される「倒産」には該当しませんので、この借入を受けることはできません。また、取引先の倒産が加入後6ヶ月未満に生じた場合など一定の事由に該当する場合にも、借り入れができません。取引先の倒産に関し弁護士等が選任され、ある程度秩序だてて倒産手続きが進められているような状況に利用可能な制度であるという印象です。

節税効果

中小機構のサイトでは「税制優遇措置 」という表現を用いています。法人の場合には支払った掛金が損金として認められますから、それに対する法人税が圧縮できるという効果が見込まれます。加えて、1年以内の前納掛金についても払い込んだ期の損金に算入できますので、毎月の掛金は最大20万円までですから、最大240万円について当期に損金として計上することが可能です。

もっとも、加入後何年か後に解約して解約手当金をもらった場合には、その金額は収益として計上され、当然法人税の課税対象になるということは理解しておく必要があります。基本的には「節税」というよりは「課税の繰延」という方がより実態に近いといえるかも知れません。

加入から解約までの期間をトータルでみて税額を減らす効果があるとすれば、たとえば共済加入時に資本金1億円以下の中小企業が法人税の軽減税率の対象である800万円以内に所得金額を収め、40ヶ月以上経過した後に共済を脱退し、その期の所得金額が解約手当金も含めて800万円以内に収まるような場合に限られると考えられます。

中小企業の法人税軽減税率は15%なので、加入時に損金計上した掛金が200万円であれば、200万円☓(23.2-15)=16.4万円が、セーフティ共済への加入により軽減税率の適用を受けることで享受できる法人税の軽減効果となります。何もしなければ所得金額が1000万円の会社が、200万円分の掛金を支払って共済に加入し、40ヶ月以上後の期に所得金額が600万円見込まれており、その期に共済を解約し200万円を追加で収益計上しても23.2%の税率は適用されませんので、200万円については軽減税率の適用で済むことになります。解約しても課税所得が800万円以内に収まることが見込まれる期に解約するということが出来れば、このような法人税の軽減効果を得ることができますが、向こう数年にわたる収益計画が必要になるでしょう。

ちなみに15%の軽減税率は2023年3月まで延長されていますが、現行法では2年毎に延長が繰り返されているに過ぎないので、この措置が廃止されてしまうと、上記のような軽減効果も得られないことになります。

キャッシュフロー

共済に加入すると掛金の支払いにより手元資金が減少するというデメリットがあります。この点についてはセーフティ共済では「一時貸付金」という形で一定の配慮がなされています。すなわち、「取引先事業者が倒産していなくても、共済契約者の方が臨時に事業資金を必要とする場合に、解約手当金の95%を上限として借入れできる制度」が用意されています。

この制度により40ヶ月以上加入し掛金総額が800万円に達している場合には、最大760万円までの借り入れが可能となります。返済期間は1年で期限一括償還、借入金の金利は平成23年以降は年0.9%という実績のようです。

資金使途は運転資金や設備資金とされておりますので、支払った掛金の範囲内で事業上の資金需要をカバーできるという意味ではある程度意味のある制度といえるでしょう。たとえば、数百万円程度の設備を至急購入したいのが、融資の審査を待てないような場面などでは、手元資金と同じような効果を期待できるかも知れません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?年末の資金繰り問題にひっかけて経営セーフティ共済についてポイントを絞って解説しました。利用できるのは取引先の「倒産」という場面であること、「節税」といっても基本的には課税の繰延であること、一時貸付金という倒産の場面以外の借入制度があることがご理解いただけたと思います。

万能の制度ではありませんが、 取引先の「倒産」 という不測の事態への備えという本来の意義からすると売掛金が発生するような事業ではまさしく「セーフティネット」として機能する場合もあり、有意義な制度ではないかと思います。

一日一楽
個人事業主は健康管理も自ら行う必要があります。明日は退職後はじめての人間ドックを受診します。先憂後楽といいますが健康診断は問答無用で受診するものと習慣づけたいものです。ちなみに人間ドックの受診日は当事務所は休業日としています。

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