これまで各種の融資制度や補助金申請について説明してきました。その中では、自社と自社を取り巻く環境の分析が求められていましたね。そして、具体的には3C分析やSWOT分析といった手法があることについても触れました。
今回は「隗より始めよ」ということで、私自身の会計事務所に対しSWOT分析を適用してみたいと思います。
きっかけ
自身の事務所にSWOT分析をあてはめてみることについては、以前から伏線がありました。最初の投稿では自分の過去の経歴や得意分野などに触れていまして、このときある程度自分の得意分野についての棚卸しをしておいたわけです。
また、最近の投稿では補助金申請や経営計画についての記事が多かったため、その中で自社の分析ツールとしてのSWOT分析についてはたびたび意識する機会がありました。そんな中、先日参加した研修で、自身の事務所のSWOT分析してみては?という提案がありました。これだけ接点が増えるとやってみない理由が逆にありません。
むしろ私自身の会計事務所も現在開業準備中で、事務所の経営方針や事業戦略などを日々検討しているのですから、SWOT分析のフォーマットで分析するとどうなるか、というのは私自身も大変興味があったわけです。
分析結果
ざざっとまとめてみた結果が以下のようなものです。1象限ごとに補足の説明をします。
内部環境(強み・弱み)
強み
私は会計士の有資格者(税理士は登録申請中)である事務所の代表自らがお客様にサービスを提供するスタイルを採用しています。規模の大きな事務所では代表はクライアントと接する機会は限られてくるでしょうし、担当する職員が有資格者でないことも珍しくありません。
会計事務所の業界にはいまだに非効率な業務プロセスが少なくありません。最たるものが手入力による記帳業務です。私の事務所はクラウド会計による自動仕訳入力を志向していますので、そのような業務は最初から存在しません。一方、歴史ある事務所では長年の慣行やスタッフのスキルなどからクラウド会計を導入したくても出来ない事情もあったりします。
最初の投稿でも触れましたが、私の職歴のメインは会計士業・税理士業ではありません。会計税務の業界の発想にとらわれない自由な発想が持ち味だと思っています。
弱み
私以外の従業員がいない、というのは強みである反面弱みでもあります。特に業務を処理できるキャパシティに限界がありますので、多くの件数を受注したり、多くの種類の業務を処理するのには困難が伴います。もっとも、従業員や大きな事務所スペースの維持にかかるコストはありませんので、売上の拡大を迫られるといったプレッシャーはありません。
不慮の事故など私の身に何かあった際のお客様へのサービス提供への影響の回避については他の同じような業態の会計事務所との連携などによって解決したいと考えています。
外部環境(機会・脅威)
自社の力ではいかんともし難い外部の事情について分析するのが外部環境の項目です。
機会
会計士・税理士の業界はAIの進展によって衰退する、というのが一般的な分析かも知れません。この分析は正しい面もありますが、税務申告がなくなるわけでもなく、経営計画の策定や他の経営支援のニーズの比重が高まってきて、従来型の記帳業務が衰退するという方が実態に近いのではないかと考えています。
特にIT業界やITをうまく利用した事業者を中心に新しい産業が生まれる可能性もあり、ITを活用した副業や複業も盛んになりつつあることに対し、会計士・税理士業界にはソリューションを提供する機会があると思います。
コロナ禍の影響の評価は単純にはしにくいですが、業務プロセスの変化ととらえると、会計事務所がソリューションを提供できる機会が増えるとも言えます。直近ではインボイス制度の導入など、業界として正面から取組むべき課題もありますので、当面は会計士・税理士の業界にもさまざまなチャンスがあると考えています。
脅威
ITの進化と社会への普及が進むにつれ、システムやプラットフォームのベンダー側の力が大きくなるのは、いまのGAFAの隆盛を見れば分かる通りです。また、効率的なシステムが普遍的になるにつれ、会計事務所のサービスに優位性がなくなる日も来るかも知れません。
北欧のIT先進国では納税申告の電子化が進んでいるという話しを耳にします。日本でも源泉徴収されている給与所得者などが確定申告は電子申告で済むようにするように誘導することはあり得るかも知れません。しかし、そもそも個人の所得が10種類に分かれていたり、法人税も租特法などを含めると日本の税制はなかなか複雑な作りになっており、まずは税制自体を簡素化しないと、申告の電子化は進まないと思います。
税務申告代理は税理士の独占業務ですから、税理士業そのものがなくなることは考えにくいですが、いたずらに複雑な税法の世界に「安住」していては税理士業の先細り感は否めません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はSWOT分析の実践例として私の事務所を分析してみました。
やってみるとわかりますが、自社の強みや具体的な顧客像をどのように設定するかだけでも、いくつかバリエーションが考えられます。従業員を雇用したり、最新の設備を導入する場合には、自社の強みを変化させることも選択肢に入りますから、顧客や市場の幅を広げることも可能になりますね。
その反面、他社にもそのような機会があるわけですから、他社にはない自社の強みを活かす形でいかに収益機会を広げられるかがポイントになるのだと思います。
一度おこなったSWOT分析も定期的に見直すと、自社のリソースや外部環境の変化を整理する良い機会にもなります。また、金融機関等の外部の関係者に説明すれば、事業戦略上のヒントを得られるかも知れません。
頭の中を整理するつもりで、まずは気軽にやってみることをおすすめします!
一日一楽
次の土曜、日曜の二夜連続でテレビ朝日で「女系家族」(原作:山崎豊子)のドラマを放映するそうです。山﨑作品では唯一読んだことがありますし、女優陣を中心にキャストも豪華ですので今から楽しみです!ただ、夜9時からの放映なので起きていられるかが心配💦